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リレーエッセイ7月 essay

自然の一部                          立石あすか


と或る一日、"屋久島"にふれる偶然が重なった。
深い緑の森が、脳裏から離れない。
屋久島に行きたい、強くそう思った。

そのような時は、不思議な出来事が巧まずして起こり、軽やかな道がつくられる。わたしはその五日後には、偉大なる巨木、縄文杉の前に居ることとなった。

屋久島では、樹齢千年を超える杉を"屋久杉"と呼ぶ。その中の一本が縄文杉であり、樹齢推定四千年とも言われている。この縄文杉に逢うためには、早朝3:30に起床し、約11時間かけて22kmもの距離を歩く必要がある。

暗がりの中、頭につけた小さなライト一つを頼りに黙々と歩く。どのくらい歩いたのだろうか。
橙色の朝日が目に映るものを徐徐に染めていき、光の道が浮き上がってくる。
日が昇るという事象が、喜びとして深く感じられた。当たり前とする見慣れた日常では観ることが出来ない事である。その時ふと、五感を通して腑に落ちた。



やはり にんげんは、"自然の一部" なのだ。

標高が高くなってきたようである。
澄明な陽光の中、白くふんわりと霧のかかる幻想的な世界が、深い森に広がっていく。緑の匂いと共に自然と融合したかのような感覚の中で、ただひたすらに歩を進めた。



ひと月に三十五日雨が降ると言われる屋久島は、
亜熱帯から亜寒帯までの幅広い植物が生息し、生物多様性の森を創造している。
厳粛な大自然に抱かれながら、現在の地球環境についてや、先人が感謝の中で自然と共生してきた事について思いを馳せた。



過酷な自然環境の全てを、今日まで"在るが儘"に受け入れている縄文杉は、深い深い優しさに満ちていて、わたしに多くのことを語ってくれた。

縄文杉を前に"有りの儘"の自身を感じた時、屋久島を訪れた意味を理解した。

この度わたしは、縄文杉に逢いに来たのだ。
敬意を払い、ご挨拶をした。



来た道をこころ静かに下って行く。

"また近々逢いに来ます。"
縄文杉と約束した事を、心に深く留めながら。
"いつでもここに還っていらっしゃい"
心の内に、確かな声がそう響いているように感じられた。

     




 国際ソロプチミスト熊本−すみれ

<例会日>
 毎月第3木曜日 午前10時〜
<例会場>
 ANAクラウンプラザホテル
     熊本ニュースカイ

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