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リレーエッセイ 2月 essay

列車の旅あれこれ                           荒木良子  


 私は中学高校とローカル列車で通学しました。車窓をながれる四季の移ろいとともに、青春の夢をはぐくんでいたようです。

 トワイライトトレイン(札幌〜大阪)
 名前の示す通り日本海に沈む雄大な太陽を愛でるツアーです。列車は札幌を出発、青函トンネルを抜け長い日本海沿岸を進みます。太平洋岸と違い少しうら淋しく清冽な感じがします。私が乗車した日はあいにくの天候で100パーセント美しく壮大な落日には巡り合いませんでしたが、雲間から漏れる朱色の輝き、刻々と移りゆく雲の色、晴天には見られない自然の芸術にしばし時を忘れて見入ってしまいました。おいしいディナーとともにターミナルの大阪に着いた時いい旅だったと思いました。

 ザ・ガン(アリススプリングス〜アデレート)
 オーストラリア大陸を縦貫している鉄道ザ・ガン。現在は北部の都市ダーウィンが始発点になっていますが、私が乗車した当時はアリススプリングスという大陸のへそに近い場所が始発点でした。駅に到着したとき、すでに長く連結した列車はにぎにぎしく乗客を迎える乗務員とともに待っていました。この列車は観光客並びに現地の人々にも人気があり、皆それぞれに期待と興奮した面持ちで列車に乗り込みました。コンパートメントには各室トイレ、シャワールームもついていました。列車はひたすら南に向かって走って行きました。オーストラリア大陸のなんと大きな荒涼たる大地なのでしょう。車窓はエアーズロックを思わせる岩山、点在する緑、そのような景色が延々と続いていました。ある人はカンガルーが見えたと言っていました。私には何も見えませんでした。でも資源国のこの大地の下に貴重なものが眠っているのだろうと、そんな事を考えていました。車内で一泊、ゆったりと時間は過ぎてゆき、ザ・ガンは終着駅に到着しました。
なんだかオーストラリア人気質を垣間見た思いでした。

 オリエント・シンプロン・エクスプレス(ヴェニス〜パリ)
 かつては王侯貴族、著名な芸術家、政治家等々、枚挙にいとまがないほどの有名人が乗車したといわれるオリエントエクスプレス。映画や小説の舞台ともなりました。歴史の表裏をも知っている列車のように思われます。瀟洒な列車はターミナル駅に鎮座していました。 
 パスポートを預けてチェックイン、クールな制服に身を包んだ乗務員に案内され、厳重な鍵を渡され我がコンパートメントに乗車、マホガニーで装飾された部屋は歴史の重みを感じるインテリアになっていました。早朝よりの緊張がとれヤレヤレと寛いで移りゆく車窓を楽しみました。この区間はイタリアアルプス、スイスアルプス、チロル地方、名だたる景勝地が続きブレンナー峠、ヨーロッパ橋等々を駆け抜けていきます。天候にも恵まれ、まさに息をのむような絶景でした。夜のディナータイムはドレスコード正装ということになっていて私どもは少し気恥ずかしいような落ち着かないいでたちでダイニングカーにおさまりました。さすがに欧米の方々はすごいドレスアップ。ただみなさん年齢がいささか高く女優さんや、モデルさんのようにはいかないという現実でした。
 17世紀から20世紀、人々はゆったりと美酒に酔い、美食を楽しみ会話を遊び、甘美で一寸危うい大人の時間を過ごしたバーラウンジは、肥ったアメリカ人が独占していました。かくして一夜は明け、8時45分列車はパリ東駅に到着。喧噪の中に入って行きました。

 列車の旅は非日常の空間に遊ぶ楽しいツールだと思います。九州は変化に富んだ自然と美味しい海の幸、山の幸に恵まれています。七ッ星という観光列車きっと素晴らしい歴史を紡いでくれるでしょう。




 国際ソロプチミスト熊本−すみれ

<例会日>
 毎月第3木曜日 午前10時〜
<例会場>
 ANAクラウンプラザホテル
     熊本ニュースカイ

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