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 リレーエッセイ

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すみれメンバーが毎月交替で執筆します

゛ 無 事 ゛
〜古希を迎えて〜
平成22年2月  
杉田 成  
     
 茶の湯と出会って約60年、その中で人生の師とも出会うことが出来、日本の伝統文化の一つである茶道がやっと少し見えてきたように思います。

 昭和25年、戦後間もない頃に小学生の私は妹と共に母のお友達であった近所の大きなお屋敷にお茶の稽古に通うことが出来ました。和服姿の美しい先生と美味しかった羊羹、休まず稽古に通ったのは羊羹に魅力が有ったようです。高校・大学は少しは「女らしく」と母に背中を押されての稽古で夏休み、冬休みと理由を見つけてはサボってばかり、今考えてみるともったいない・・・・辛抱強く見守ってご指導頂いた師に感謝しています。
 
 そんな私が社会人となり職場の人間関係に悩んだ30才前後から稽古が楽しくなってきました。茶室に入り点前座に座り「無」になって茶の湯の世界に没頭する。厳しい指導に涙を流しながら、でも次の稽古日には点前座に座っている。そして、冷暖房も無い茶室で盛夏には涼しさを、厳寒の冬には暖かさを感じる茶室の持つ魅力に取付かれていきました。それは日本の伝統文化を大きく育んでくれる「四季」を茶室という空間に上手に取り入れて「お客様をもてなす」すなわち「茶の湯の心」そのものであり、道具組による演出なのだと感じられるようになりました。床に飾られた一幅の軸、活けられた花、棚、水指、棗、茶杓等々これらが競うことなく茶室の中で調和しながら季節感を出しお客様を迎える。書、焼物、塗り物、等勉強することも楽しくなりました。

 そして、このことは仕事にも好影響となり前向きに取組めるようになっていました。茶の湯に出会ったことに、そのすばらしさをご指導頂いた師との出会いに感謝しています。

 毎年12月には茶室に「無事」の軸を飾り最後の稽古をしますが年々この二文字の意味が心にずっしりと重たく感じるようになりました。特に昨年は「古希」を迎え、一年の「無事」に感謝しながら新しい年を迎えることが出来ました。

 私が師から受け継いだ「茶の湯の心」を、その中にちりばめられた「日本の伝統文化」を少しでも若い人々に伝えられたらと今年もお弟子さん達と稽古に励みたいと思っています。







              
   
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