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リレーエッセイ 
すみれメンバーが毎月交替で執筆します

截 金
平成19年12月
松本 順子
       

 「きりかね」と読みます。耳にされたり御覧になった事のある方は少ないのではないかと思います。薄い薄い金箔を熱した電熱器の上で、海苔をあぶる様にして両面を合わせ二枚泊を作り、それを三つ合わせて六枚泊を作ります。それを細く細く竹刀で切り、のり筆で貼付けていくものです。私は、自身が不器用で何の能力も無い人間ですので、色々な分野の方々の作品を見るのが大好きです。

 今から15年程前、この截金細工の作品を雑誌で見て、その第一人者が仏師に嫁いだ江里佐代子という女性である事を知りました。後に人間国宝となられたその女性の、おそらくたった一冊しか出版されていない本を読み、その制作時の写真を見るにつけ、仕事への真摯な態度と作品の美しさに感動してしましました。

 その江里さんがこの10月、仏の展覧会出席の為、途中立ち寄った英国で急死されたという記事が、新聞の片隅に小さく載っておりました。今一度、手持ちの本を見てみますと、私と同じ年であったことも知りました。それからTVのニュースを見続けましたが、放送されることはありませんでした。

 唯一残され絶版となったこの一冊の本を大切に、地味で真摯に日本の伝統技法を仏像や工芸品に生かして一生を全うされた江里佐代子さんの御冥福を心からお祈りし、彼女の技を知り得た事に感謝したいと思っています。

 私達が、その作品を目にする事は、これからもあまり無いと思いましたが、偶然、山鹿市の県立装飾古墳館の「日本のわざと美」で11月18日から12月23日まで彼女の作品を見る事が出来ると知りました。
 「念ずれば、通ず」―ですね。
 出来ましたら、是非一度作品を見て頂きたいと思います。

                  


              
   
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